2018/06/23(土)大阪北部地震は上町断層が動いた?

2018年6月18日に大阪北部で大きな地震がありました.
死者4人、負傷者296人もの被害を発生させ,しばらく大きな地震のなかった関西地方に大きな衝撃を与えました.
中でも大都市圏での地震ということで交通への影響は大きく,近畿圏の各高速道路は通行止め,鉄道も全線運転見合わせとなり,大混乱となったようです.結局JRの運行再開には主要路線で22時ころまでかかり,一部終日運休した路線もありました.私も運転見合わせに巻き込まれ帰宅するのに大変難儀したのを覚えています.

さて,今回の地震はどのようにして起こったのでしょうか?
震源地は北緯34.8度・東経135.6度で,大阪府の高槻市南部で,淀川がもたらした土砂が堆積している比較的軟弱な地盤が広がっている地域です.


新聞などでは,今回の地震は有馬―高槻断層帯が関連しているとの記事がよくみられます.
東京大地震研究所の古村孝志教授は「現時点では断定できないが、震源の位置などから有馬-高槻断層帯が関係した地震とみられる」との見方を示した。
[(access failed) https://www.sankeibiz.jp/compliance/news/180618/cpd1806181540004-n1.htm]
気象庁の発表によると、今回の地震は上記の中の「有馬-高槻断層帯」の影響が、最も大きいとみられます。
[(access failed) https://weathernews.jp/s/topics/201806/180085/]
確かに,震源域の近くには有馬高槻断層帯という大きな活断層が存在しており,関連が疑われるのはもっともです.実際に震度分布を確認しても北東から南西に向けて震源域が広がっており、有馬高槻断層の分布と一致しています。

180618_osaka_kakudai.gif
*1

しかし,断層のメカニズムを考えてみると少しおかしいことに気づきます。有馬高槻断層は東西方向の断層で、今回の地震は東西からの圧縮型の地震だからです。
まず,有馬高槻断層帯について情報を確認しましょう
有馬-高槻断層帯は、北摂(ほくせつ)山地と大阪平野・六甲山地の境界部にほぼ東北東-西南西に延びる活断層帯です。...(中略)...

有馬-高槻断層帯は活動度の高い(A級-B級)右ずれ北側隆起の断層帯であり...
[(access failed) https://www.jishin.go.jp/regional_seismicity/rs_katsudanso/f076_arima_takatsuki/]
有馬-高槻断層帯は東西方向に延びる,右ずれ北側隆起の断層です.一方で,今回の地震の発震機構のメカニズム解は次のようになっています
走向傾斜方位鉛直
節面1214.1˚56.9˚P軸(最大主応力)286.2˚81.4˚
節面2353.1˚40.8˚T軸(最小主応力)175.2˚22.8˚
このことから,東西方向から圧縮され発生した逆断層型の地震であることが言えます.また,南北方向に広がり,地下へ進むにしたがって40度の角度で東へ向かう断層です.
つまり,有馬-高槻断層帯と今回の地震ではメカニズムが異なるようです.それでは,いったいどの断層が原因だったのでしょうか?
付近で東西方向に圧力軸を持つ逆断層型の地震といえば,南側に生駒断層帯や西側に上町断層帯が挙げられます.地震調査研究推進本部の地震調査委員会の資料を見てみましょう.生駒断層は低角(30-40度程度)で東に傾斜*2,上町断層は南北方向へ伸び65-70°程度(東傾斜)*3とあります.

map_177.png
*4
生駒断層は震源より南の東大阪市付近では生駒山のはっきりとした断層崖を形成していますが,今回地震が発生した枚方・交野あたりになると複数の断層に分岐し,広い丘陵を形成するに至っています.断層自体は枚方あたりで留まっていますが,今回の地震はこの断層の先で発生したと考えるとつじつまが合いそうです.このことから、生駒断層で発生した地震なのではないかと考える人もいます。

しかし、ここには大きな誤解があります。活断層図における断層線は、地中の発震域における線ではなく断層線を地表に延長した時の図です。そのため、地中から今回の地震の震源と断層の位置関係を見てみると次の図のようになります。
fig1.png

今回の地震の深さは13kmでどの断層にも該当せず、生駒断層と上町断層の間で発生したことになってしまいます。ということは、生駒断層と上町断層の間に未知の断層となるようなものが存在し、今回の地震ではそれが動いたのでしょうか?

よくよく考えてみると"上町断層は南北方向へ伸び(傾斜が)65-70°程度"というのは大きすぎます。というのも上町断層と生駒断層は同じメカニズムで平行に走行しています。つまり、2つの断層は同じような力のかかり方をして発生した断層と考えられます。ですので傾斜角は同じになるはずです。また、一般的に逆断層型の場合、破壊のメカニズムから考えて傾斜が高角度(45度以上)にはなりません。上町断層では65-70度程度となっていますが、これは深さ1kmよりも浅いところでの測定結果です。実際には地下の深い部分においては45度程度の浅い破壊になっていると考えるのが自然です。*5

そこで、上町断層の傾斜角を45度と仮定し、改めて今回の地震の震源と断層の位置関係を地盤を東西に切り取ってみてみますと以下の図のようになります。
fig2.png

今回の地震は深さ13kmで発生していますので、上町断層の断層面と一致することがわかります。
以上の考察から今回の地震は上町断層の末端で発生したといえるのではないでしょうか?

2018/02/09(金)赤字31路線を一斉廃止へ バス会社、規制緩和に抗議

https://www.asahi.com/articles/ASL285SDXL28PTIL02B.html
 全国のバス事情に詳しい交通ジャーナリストの鈴木文彦さんは「バス需要が右肩下がりの時期に実施されたため、各社の消耗戦のような価格競争や、ツアーバスの安全性低下など、規制緩和に問題があるのは確かだ。ただ、バス利用者の多くはそうした業界の実情を知らない。『路線廃止』というやり方で、両備側の意図が市民にどれだけ伝わるかは微妙だ」と話す。
赤字31路線を一斉廃止へ バス会社、規制緩和に抗議:朝日新聞デジタル
昔は黒字路線を独占的に維持させることで赤字路線を維持させるという紳士協定みたいなものがあったけど,規制緩和でその前提が崩れたから赤字路線が廃止されるのは当然の話で,過当競争とか安全性とかは関係のない話だけど...

記者が勝手に話を作ってしまったか?